アイルランド民族主義の歌、反乱歌
アイルランドの曲はめっちゃいいんですよ、なぜか知名度が低いですがね。
しかし、民間が作り出した民族主義的な曲には、官製の軍歌にはない不思議な魅力があります。
という訳でアイルランドの反英国支配を歌った曲を2曲紹介しますよ。
Come Out Ye' Black And Tans
IRAと言えばこの曲ですよね。アイルランド全域でイギリスに対する独立の機運が高まり、IRAの力も増していた1920年代を描くドミニク・ビーハン作曲の名曲です。アイルランドと英国の歴史をネチネチネチネチ嫌味ったらしく皮肉った歌詞最高。
ちなみに題の「ブラックアンドタン」とはアイルランド独立戦争当時の特設警察組織で、IRAなど独立派を弾圧する部隊です。大戦帰還兵を中心とした粗暴な隊員が多く、民間人とその財産への不当な暴力が当時全世界で問題視されたそうです。黒と茶色の制服だからブラックアンドタンとかいう安直な呼び名...
歌詞(訳は信用するな)
I was born in the Dublin street
俺はダブリンの通りで生まれた
Where the loyal drums do beat,
英国王室の太鼓が鳴る所
And the loving English feet walked all over us;
そして親愛なる帝国単位が俺たちをこき使う場所だった
And every single night when me dad would come home tight,
そんで毎晩、親父が酔って帰ってくると
He'd invite the neighbours out with this chorus:
ご近所を集めてこう大合唱してた
*
Come out you black and tans,
来やがれブラックアンドタン共
Come out and fight me like a man,
男らしく戦ったらどうだ
Show your wife how you won medals down in Flanders;
フランダースではどうやって勲章をもらったか、てめぇの女房に見せてやれよ
Tell her how the IRA made you run like hell away,
IRAからはどうやって尻尾巻いて逃げ出したか教えてやれよ
From the green and lovely lanes of Killeshandra.
緑に覆われたキルシャンドラの美しい路地から逃げ出したかを
*
Come tell us how you slew
さあ教えろよ、どうやって殺したか
Them ol' Arabs two by two,
アラブ人は二人ずつ?
Like the Zulus they had knives and bows and arrows;
槍に弓に矢を持ったズールー族は?
Of how bravely you faced one with your sixteen-pounder gun,
勇敢な様相したお前らは、16ポンド砲で戦ったんだ
And you frightened all the natives to the marrow.
そうやって”全ての”原住民を骨の髄まで震え上がらせたんだよな
*繰り返し
Come let us hear you tell
さあ、俺達に教えてくれよ
How you slammed the brave Parnell,
どうやって勇敢なパーネルをこき下ろし
And taught him well and truly persecuted;
処罰して、心の底から迫害したか
Where are the sneers and jeers that you proudly let us hear,
自惚れて俺らに向けた嘲笑と冷やかしはどこへ行った?
When our heroes of sixteen were executed.
俺らの英雄16人を処刑した時のことだよ
*繰り返し
Oh! Come out you British Huns,
やい!かかって来いイギリスの蛮人め
Come out and fight without your guns,
大砲無しで戦ったらどうなんだ
Show your wife how you won medals up in Derry;
デリーでどうやって勲章を勝ち取ったか、てめぇの女房に教えてやれ
You murdered sixteen men and you'll do the same again,
お前らは16人の男を殺しても、また同じことをするハメになる
So get out of here and take your bloody army.
だから忌々しい軍隊を連れて、ここから出て行きやがれ
*繰り返し×2
様々なカバーがあるけど個人的にはこれが一番好きですぅぅううう
The Men Behind the Wire
フォーク・グループのthe Barleycornに所属したパディ・マクギガンが1971年に作曲した強烈な反英国歌。英国軍による民族主義者摘発作戦であったドミトリアス作戦で罪状も裁判もなく拘束された民間人について歌っているものです。作曲者は発表直後に英国の報復によって投獄されました。この作戦では約7千人の市民が拘束され、後には軍による拷問も発覚しました。この作戦の発端はIRA暫定派による3月10日の英兵殺害事件を発端に暴動の拡大、北アイルランド政府による戦争宣言、特別拘禁措置の発令や前年にBスペシャルズから改編したアルスター防衛連隊の登場、より大規模な英軍の介入などが起こり、72年の「トラブル」が最も激化する直前でした。71年から5年で1642人が死亡する紛争を象徴する曲です。
この歌はアイルランドの音楽チャートで1位を記録し、以後三週間とどまっていたほどの大ヒットを見せました。当時の民族感情、対英国の憎悪感情が読み取れるようです。
憎悪の念が作曲にもエネルギーを注ぎ込むんやなって...これは虐殺の文法やで...
しかし歌詞のわりに陽気すぎないかね?
歌詞(訳は信用するな)
*
Armoured cars and tanks and guns
装甲車に戦車に大砲が
Came to take away our sons
息子たちを奪いにやってきた
But every man must stand behind
けれども男は皆、向こうに立っている
The men behind the wire
男たちは刑務所のワイヤーの向こう側にいる
*
Through the little streets of Belfast
ベルファストの小さい通りを抜ける時
In the dark of early morn
早朝の暗さの中で
British soldiers came marauding
イギリス兵は略奪にやってくる
Wrecking little homes with scorn
嘲りながら小さな家を破壊する
Heedless of the crying children
泣いてる子供を無視して
Cragging fathers from their beds
父親たちを寝床から引きずり出す
Beating sons while helpless mothers
殴られる息子たちを母親はどうすることもできない
Watched the blood poor from their heads
頭から血が引いていくのを見るだけだった
*繰り返し
Not for them a judge and jury
裁判官と陪審員はいない
Nor indeed a trial at all
裁判なんて本当にまったくない
But being Irish means you´re guilty
でもアイルランド人であるならば、お前たちは有罪ってことだ
So we´re guilty one and all
なら俺たちは誰も彼も有罪さ
Round the world the truth will echo
世界は丸い、真実はこだまする
Cromwell´s men are here again
クロムウェルがもう一度現れたと
England´s name again is sullied
イングランドの名はもう一度穢された
In the eyes of honest men.
誠実な人から見れば
*繰り返し
Proud we march behind our banner
横断幕の後ろを歩けて光栄さ
Firm we´ll stand behind our men
断固として彼らを支援する
We will have them free to help us
彼らを釈放させて加勢してもらう
Build a nation once again
もう一度、一つになった国を作り上げるんだ
On the people step together
皆で一歩ずつ
Proudly firmly on their way
それぞれの誇らしい決意で
Never fear never falter
決して恐れず、決して怯まない
Till the boys are home to stay
男どもが家に帰れるまでは
*繰り返し
The Wolfe Tonesのカバーとかもいいと思うのでアルバム買え
アイルランドの反乱歌のメッセージ性がうらやまし過ぎる...これに比べると日本の曲はカスや(辛辣)
という訳で有名な2曲の紹介と誤訳しました。日本のオタクにも広まんねーかなー。